結果は同じ

 

 

 

「江利子さん、どうしてやってくださらないの?」

一枚の紙を巡って、クラスメートたちにつめよられている。クラス代表でレポー

トを書くという課題が、私の班に課せられ、私が皆の推薦を断ったらこうなった。

意外とよくあることだ。私は余程何にもしていないように見えるらしい。

「人間って面白いわね」

「何を言っているのかわからないわ」

どうも馬鹿にされたと思ったらしい。さっきよりクラスメートの声が怒気が含ま

れている。

「親しくなるとリクエストを疑問形で口にするようになるからよ」

非難されたと認識したようで、さらに抗議をしようとするクラスメートたち。も

ういいかげん面倒になってきたので、どこかへ退散しようとした。

 

「どうかしたの?」

蓉子だ。このお世話好きは何か揉め事があると仲裁にわざわざ入ってくる。まぁ

蓉子の仲裁は的確で、よくやっているとは思うけど…

「な…」

何でもないと言おうとしたが遅かった。すがるようにクラスメートたちは蓉子に

訴えている。

それを蓉子は熱心に聞いてやり、何と言ったのかわからないが上手く収めたらし

い。

クラスメートたちは「やっぱり蓉子さんは頼りになるわ」などと言いながら散っ

ていった。

 

「これくらい引き受けてあげたらいいのに」

蓉子は呆れた顔で言った。

「お疲れ様、どうやって納得させたの?」

「私がやるって言ったわ」

蓉子のお人よし、全く頭が下がる。

「あなた、忙しいじゃない」

「まぁやれないことはないでしょ」

蓉子は涼しい顔をしている。山百合会でもよく働く彼女は、どこにいても頼られ

る運命なのか。

 

「あんなこといわなくてもいいじゃない」

「あんなこと…?あぁ親しくなるとってやつ?単なる事実を述べたまでよ」

本当に江利子に他意はなかった。別に非難したつもりもない。

「江利子はそうやってクールだから皆が誤解するのよ、少しはやる気があるよう

に見せたらいいのに」

「やる気なんてあってもなくても同じ。やらなきゃ意味ないじゃない」

蓉子の手から紙をとりあげる。

「それどうするの?」

どのくらい書けばよいのか、計算する。

「やるのよ」

 

 

江利子は目の前の紙をひたすらうめていった。

 

 

追記しておくと、ものの数分で書いたそれは、後日クラスメートに絶賛されるこ

とになる。

 

 

 

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