『ではひとつめ、すきな食べ物はなんですか?』

 

 

どっどっどっど。

 

 

再び校舎が鼓動を刻む。きっと近隣のスーパーは今日大忙しだ、と祐巳は思った。

 

『マスタードタラモサンド』

 

白薔薇さまはひとことで答えた。

『あぁ、学校で扱っているやつですね』

白薔薇さまがそれを食べていたことは祐巳にも覚えがあった。

『あとコーヒーもすきだね』

『いちばんですか?』

紅茶やジュース、他にも選択肢は様々である。

 

 

 

『いちばんすきなのは祐巳ちゃん』

 

 

 

鼓動が止んだ。清き乙女たちは夜叉に生まれ変わる。

 

『はい?』

 

祐巳は思わず聞き返した。

 

 

『だから祐巳ちゃんがいち……』

 

 

ぶつっ

 

 

祐巳は一端スイッチを切った。

 

「あら、祐巳ちゃんどうしたの」

ケロリとした顔で白薔薇さまは問う。もう一度スイッチを入れると同時

に祐巳は喋った。

『ではここで一曲お聞きください、Pastel pureですどうぞー』

穏やかなメロディーが校舎を包む。どうかこれでみんな冷却されますようにと祈

った。

「祐巳ちゃんたら突然どうしたの?」

「どうしたもこうしたもありません」

気付いているに違いないのに、何にもわかりませんって顔でいる白薔薇さまに祐

巳はどうしていいかわからなかった。

「質問に答えてください」

「ものすごく正直に答えているつもりだけど?」

「お姉さま、祐巳さんは照れてるんですよ、きっと」

 

全く通じ合わない祐巳と白薔薇さまの会話に割って入ったのは志摩子。

 

 

「え!そうなの?志摩子」

「だって祐巳さんはシャイな方ですもの、やはりそこは考慮してさしあげないと……」

 

 

祐巳の思惑を無視した会話が続く。

 

 

「お姉さまは少し鈍感なところがあります」

「そっか、勉強になったよ。志摩子」

 

 

いえ、志摩子さん。今指摘すべきはそこではありません。祐巳は見えない心の涙を流し

ていた。もうなんでもいい。早くこの時がすぎてくれさえすれば……!

はっ、曲が終わる……!

 

「志摩子さん、次は志摩子さんからだからね」

「わかったわ、頑張るわね」

まるで天使のような笑顔を見せる志摩子さんに祐巳は見惚れた。確かに……みんなが騒

ぐのもわかるんだよね……

「はい、Pastel pureお届けしました。ではひきつづきインタビューをお送りします」

 

 

ワーワー

 

歓声が聞こえる……火山は噴火活動をやめたらしい。




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